FKA twigs 『LP1』

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FKA twigs 『LP1』

 

FKA twigsは、ジャマイカ系とスペイン系のハーフとして生まれ、10代のころからロンドンでダンサーとしてのキャリアを積み上げていた人だが、2012年に最初の音源をBandcampで発表したことをキッカケに注目を集めたシンガーソングライターだ。彼女が2013年に発表したEPに続いて今年発表したフルアルバムが、本作『LP1』である。

この作品にプロデューサーとしてクレジットされているのは、ArcaやDev Hynes(Blood Orange)など、現代のエレクトロ、R&Bシーンをリードする有名どころばかりだが、そんな才能を曲ごとに起用しつつも、それぞれの曲で散漫な印象は皆無だ。むしろ作品全体を貫く繊細な感覚が印象に残る。それは、プロデューサーの起用が自らや作品をコントロールする存在としてではなく、作品制作における一要素に過ぎないということだろう。そこには、シンガーでありダンサーである表現者としての「身体性」の彼女と、作品の世界観を形成する「精神性」の彼女がそれぞれ別に、しかし互いに関係しあいながら存在していることを強く感じる。

FKA twigsは、最初の音源をインターネット上にアップしてシーンに登場した、いわゆる”インターネット出身”のアーティストで、この作品に収録されている「Video Girl」や「Two Weeks」をはじめとした印象的なMVの存在からも、そのビジュアルイメージ含めた情報をインターネット経由で手に入れることができる状況にある。しかし、それでもどこか掴みきれない神秘性をたっぷりと残しているように思えてならない。音楽作品として高い完成度を示しながら、それを上回る強い引力を秘めた稀な作品である。

 


FKA twigs - Two Weeks - YouTube