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Gotch『Can’t Be Forever Young』

Disc Review Country Folk Indie Rock Japan

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まず、実に面倒な作品だな、と思った。CDでの発売に先駆けて、自身がアンバサダーを務めるRecord Store Dayに合わせて12Inch LPフォーマットでの先行発売。しかも、その発売日から1週間はオンラインでの販売もできない。要は真っ先に聴きたければレコード・ショップに出向いて手に入れるしか無い作品だったからだ。しかし、このようなリリース形態をとったことは、実はこの作品の内容とも無関係ではない。

Gotchの初となるソロ・アルバムである『Can't Be Forever Young』は、全体を通して彼に大きな影響を与えた海外の音楽、とりわけアメリカのインディー・ロックへの憧憬を感じられる作品である。ギターをはじめとして、トランペットやメロトロンなどの生楽器を中心に構成された音の質感はとても優しく、生身の体温を感じられるものだ。またバンドでの作品とは異なり、ミドルテンポの楽曲が続く中にもフォーキーな、あるいはカントリー調の楽曲があり、新鮮な印象を受ける。その印象は、クレジットされているサポート・メンバー、特に震災後に出会ったであろう若手ミュージシャンとの出会いが大きく作用しているように思う。また、その面々とも繋がりの深い大阪・堀江のレコードショップ、FLAKE RECORDSの存在も、LPリリースのきっかけとなっていることだろう。

ボブ・ディランは「Forever Young」と歌ったが、この作品のタイトル曲でもある「Can't Be Forever Young」はそれをシニカルに否定しているわけではない。この曲の邦題に「いのちを燃やせ」とあるように、彼は人生を精一杯生きようというメッセージを込めて歌っている。その他にも、「Lost」などこれから先の未来のことをポジティブなメッセージで歌った曲が目立つ。

自費で『The Future Times』という新聞を発行したり、またこの作品の1500枚ものLP盤に直筆でサインを入れたり、彼のそういう行為は一見とても無駄にも思えるし、そこに何の意味があるのだろうかと問われればそれまでだが、ごくシンプルに、人の手を通じて伝わるフィジカルなコミュニケーションを彼は愛しているのだと思う。そういうコミュニケーションを求めるがゆえの、彼なりの一見「面倒」なやり方なのだ。

あなたはこの作品をどうやって手に入れて、どうやって聴くだろうか? 配信で手に入れてパソコンで聴いてもいいし、LPに針を落とすのも悪くない。そこにある面倒さだって人生の一つの彩りとして、きっと愛おしいと思える作品なのだから。

  • Label:only in dreams
  • Featured Format:LP
  • Release Date:2014/4/30