ハロウィンだからハロウィンの話をしよう。

"Halloween"じゃなくて、"Helloween"の話ね。 

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How Many Tears(1985年)

 Helloweenというのは、1984年にドイツで結成されたへヴィ・メタル・バンドです。同じく1984年結成のバンドというと、例えば国内ではたまとかREBECCAとかZIGGYとかがいるので、まぁそんな時代です。僕が生まれた年でもあります(どうでもいい)。

ファーストアルバム収録のこの曲に代表されるような、スラッシュ・メタル的な攻撃的なギターリフにドコドコと高速でせわしないドラム、そして耳をつんざくようなハイトーンのスクリームという特徴的なスタイルは、その後のメタルシーンにめちゃくちゃ大きな影響を与えています。というか、Helloweenのスタイル自体がその後のパワー・メタルとかスピード・メタルと呼ばれるジャンルのスタンダードになります。

そして、この曲を聴いて何よりも気になることは音が悪い(失礼)、そして歌がヘタ(失礼)ですかね。歌っているのは初代ボーカリスト兼ギタリストのカイ・ハンセンという人です。ギターソロも弾きつつ、ハイトーンのシャウトもこなす凄い人なんですが、いかんせん歌唱力がちょっと怪しかったりもします。でも、そういうことをネタにしつつも、いつもニコニコしている彼のことはだいたいみんな好きです。彼のことが嫌いという人には、僕は会ったことがありません。最近、頭髪の方が結構アレな感じになってきたりしていますが、そういうところも含めて愛すべきキャラクターです。

この「How Many Tears」という曲に関しては、とにかくスピード感溢れる演奏とエモいメロディーの組み合わせが大変素晴らしく、辛気臭い(失礼)ミドルパートのことはどうでもよくなるくらいの名曲です。

 

Eagle Fly Free(1988年)

カイのボーカルがあまりにアレだったからかどうかは知りませんが、バンドは専任のボーカリストを加入させます。バンド加入当時18歳で、身長も180cmほどあるマイケル・キスクという男です。なんとなく日本語の語感がカワイイので、彼のことをドイツ語読みの”キスケ”と呼ぶ人が結構います。僕もそうです。キスケたん。

このボーカリストがまたとんでもないボーカリストでして、声量もあるしとにかく高音域のシャウトにパワーがあって、しかもコミカルなニュアンスも出せちゃうという、へヴィ・メタルの歴史においても屈指の凄いボーカリストだったりします。よく見つけてきたな!!

87年リリースのセカンドアルバムと翌88年リリースのサードアルバムは、訳あって2枚セットのコンセプトアルバムになっていて、『守護神伝』というなにやらカッコいい邦題がついています。この2枚のアルバムは、Helloweenというバンドの歴史においても代表作とされていて、Helloweenのアルバムで最初にどのアルバムを聴けばいい?ってメタル好きに訊くと、この2枚って答える人が多いと思います、たぶん。

この「Eagle Fly Free」という曲は2枚目の『守護神伝-第二章-』の実質1曲目の曲で、展開の美しさとキスケたんのハイトーン・ヴォイスが映えるサビ、そしてベースソロにドラムソロにツインのギターソロというバンドキッズがコピーしたくなる要素満載の名曲ですね。今でもライブでは定番の1曲。

 

Your Turn(1991年)

「Eagle Fly Free」をリリースした翌年の89年にオリジナル・ボーカリスト兼ギタリストのカイ・ハンセンが脱退して、後任のギタリストにローランド・グラポウという人が参加しますが、事務所移籍のあれこれなんかでバンド活動が停滞しちゃったりします。

その末に発売された4枚目のアルバム『Pink Bubbles Go Ape』(91年)は、これまでのパワーメタルのイメージを一新するようなポップな路線を選択。キスケたんのポップセンスが爆発していて、いま聴いてもそんなに悪いアルバムじゃないんですけど、バンドの評価が分かれていく時代に突入していきます。いわゆるヘヴィ・メタル・マナーから逸脱したメジャー・キーの楽曲だったり、バラードだったり。この「Your Turn」という曲なんか、個人的には大好きな曲なんですけど、まぁ、こんなんHelloweenじゃねーよって人の気持ちもわからないではない、うん。

さらに93年には、これまた似た路線の『Chameleon』というアルバムを出して、こっちはもう決定的にスベるんですね。ダダスベり。アメリカでは時同じくしてグランジブームが起こっていって、そういうタイミングの悪さも手伝って、 バンドは暗黒期、黒歴史まっしぐらになっていきます。当然メンバー間の空気も保たれず、オリジナル・メンバーでギタリストのマイケル・ヴァイカートにより、ドラムのインゴ・シュヴィヒテンバーグと共に、ボーカルのマイケル・キスクは解雇同然にバンドを追い出されてしまいます。キスケたん (´・ω・`)

Helloweenはどうなる!? 明日はどっちだ!?

 

Power(1996年)

しかし、Helloweenはまだまだ死んではいませんでした。94年に新しいボーカリストのアンディ・デリスと、ドラマーのウリ・カッシュを迎えます。ボーカルのアンディは、ハイトーン一辺倒ではない多彩な表現のできるボーカリストで、なおかつソングライターとしても優秀、加入後は作曲でもバンドに大きな影響を与えていくことになります。ドラムのウリは、ちょっと音を聴いただけでこの人とわかるようなキャッチーなフレージングが持ち味のドラマーで、歌っているかのようなドラミングが印象的なドラマーです。

バンドは、94年に6枚目のアルバム『Master of the Rings』 で復活の狼煙を上げます。 メタリックながら、初期のスラッシーな路線とは一線を画すようなパワーメタル然としたサウンド・スタイルに、日本でも人気が復活します。そして、96年リリースで、この「Power」も収録した『The Time of the Oath』 も大ヒット。キャッチーなHelloweenを確立することになります。この曲、本当に名曲!! 僕はカラオケでいつも歌います(これもどうでもいい)。

さらに、98年リリースの『Better Than Raw』というアルバムも引き続きヒットし、今日のHelloweenの基本的な部分はこの時期に出来上がります。 

 

Just A Little Sign(2003年)

そんないい時期も長続きはしないのがバンド、00年にリリースした9枚目のアルバム『The Dark Ride』は、当時の時流に乗ったかのようなダウンチューニングを取り入れたヘヴィ&ダークな路線に進み、またいい感じにスベり倒します。

00年頃と言えば、アメリカには彗星の如くSLIPKNOTが登場してきた頃で、分を弁えずチューニングを下げてアメリカ市場に挑み、爆死したヨーロッパのバンドは数え切れなかったわけですが、Helloweenもそれに漏れず、モダン・ヘヴィネス・シーンの餌食となったわけです。そして、01年にはギターのローランドとドラムのウリが脱退してしまいます。

しかし、翌02年には身長197cmで若くてイケメンで、テクニックもあるし曲も書けるというチートなギタリスト、サシャ・ゲルストナーを新メンバーに迎えます。よく見つけてきたな!!(その2)彼は本当にステージ映えのするギタリストです。

バンドは原点回帰。Helloweenの、Helloweenによる、Helloweenらしいアルバム『Rabbit Don't Come Easy』をリリースします。その1曲目を飾るスピードチューン「Just A Little Sign」は、MVは死ぬほどダサい(失礼)ものの、曲はまさにHelloween印の痛快な1曲!!

バンドはその後、代表作である『守護神伝』の続編となるアルバム『守護神伝 -新章- Keeper Of The Seven Keys - The Legacy』も含め、2-3年に1枚のリリースペースを保ちながら、日本最大のメタル・フェス LOUD PARKへの参加も含め度々来日、今年の9月にも来日公演を開催するなど、精力的に活動を続けているのでした。

おしまい。