アイドルとの贅沢な時間

6月30日、”ももち”こと嗣永桃子さんのラストコンサート行ってきました。そのことをちょっと書いておきたくて。

正直、自分は大森靖子さんきっかけでモーニング娘。'14からハロプロに興味持ち出した人なので、Berryz工房のコンサートは一回も見たことがなくて、Buono!だって最後の横浜アリーナを見ただけだし、カントリー・ガールズだって単独のコンサートを見たのは中野サンプラザの1回だけ。そんな超ライト層として、6月30日のコンサートを見ていました。

冒頭のカントリー・ガールズのメンバーとの小芝居に始まり、序盤はベリ曲を惜しみなく披露し、自身の15年間のアイドル生活を総括するように15曲(歌ってはいない「スッペシャル ジェネレ~ション」を入れたら16曲かな?)で構成されたメドレーで会場を盛り上げ、そこから一転してピアノ伴奏のみで歌い上げる「VERY BEAUTY」と「I NEED YOU」。ももち結びを解禁してカントリー・ガールズとしてのここ数年の楽曲たち。

どれもこれもが愛情に満ちていて、全体の選曲としても、これは本当に僕の妄想になってしまうけど、自分自身が最後のコンサートで表現したいもの優先というよりは、お客さんが喜ぶもの、お客さんと一緒になって盛り上がれるもの、お客さんと一緒に思い出を辿れるものを“ももちオンステージ”としてまとめあげた、アイドルとしてのあり方を詰め込んだ隙のないものだったなと思います。

で、ここで書きたいのはそういうライブレポートの類ではなくて、アンコールでの卒業スピーチを聞いていて感じたことについてです。

卒業コンサートではお決まりの卒業スピーチ、手紙を読む形式ではなくマイク一本で語られるつんく ♂さんへの言葉、Berryz工房Buono!の同期メンバーへの言葉、そして最後まで活動を共にしたカントリー・ガールズの後輩メンバーへの言葉。そのどれもが実直でとても美しく、静かに会場を包みます。そして最後に語られたファンへの言葉。そのファンへの感謝として語られた最後の言葉が、自分の心を深く打ちました。

「私は本当に自分が大好きです。(中略)だけど、こんな風に自分を好きになれたのは間違いなくファンの皆さんのおかげです。」

「最後になりますが、私に出会ってくれてどうもありがとうございます。ももち幸せになってねって言ってくれて本当に嬉しかったです。でも、私は見ての通りビジュアルはいいし愛嬌もあるし、それに運まで持ってるから大丈夫です。皆さん、皆さんの方が絶対に幸せになってください。」

いや、この部分にももちのアイドルとしての全てが詰まってると思ったんですよね。

一般的な(TV的な、とでも言うべきか)ももちのイメージは、「自分かわいい」「自分大好き」「ピンクのワンピース」「髪型(ももち結び)」「許してニャン」とかだと思うんですけど、この言葉はそういうある種のナルシスティックなキャラクターとしての発言とはどうしても取れないんですよ。

アイドルがもたらす最大の力は、やっぱり「肯定する力」だと僕は思っています。アイドルを見ていて楽しい、癒されるというのはあると思いますし、その活動の頑張りを通して勇気付けられるってことだってもちろんあると思うんですけど、それ以上に力強いものが「肯定する力」なんじゃないかと。「あなたはそこにいて大丈夫だよ」という存在を肯定するものもそうだし、「あなたの好きなものは最高だよ」という好きを肯定することもそう。

ファンの人たちへのメッセージとして、もちろん「応援してくれてありがとう」って言葉もその通りだけど、それを上回る愛情を込めた言葉が「私は(あなたたちが応援している)自分のことが大好き」だったんじゃないかなって。この言葉って、自分を応援してくれたファンに対する最大の賛辞だと思うんですね。あなたが好きなもの、夢中になって応援しているものは最高だよ、正義だよ、世界一だよって肯定する言葉。もちろん、歌とかダンスとか振る舞いとかスタイルの維持とか、ももち自身の努力の積み重ねの上に説得力を生む言葉だと思うけど、ファンにとって一番愛情を込めた表現がこのメッセージなんだなと思って、正直ホロっときました。

 

また同時に、ある野球選手の引退スピーチを思い出したりもしていました。

2013年10月8日、西武ライオンズ石井一久投手の引退試合でのこと。

石井一久といえば、高卒でヤクルトスワローズに入団し、松井秀喜選手などとの名勝負も繰り広げた三振を奪う能力に長けた左腕投手。2002年にメジャーリーグに移籍してからは、頭部に打球の直撃を受けて死にかけたりしながら4年間で39勝を挙げ、2006年に古巣ヤクルトへ復帰したのちFA権を行使して西武ライオンズへ移籍してきていました。

引退セレモニーでは、球団や関係者、チームメイト、家族への感謝を述べた後、ファンへの感謝のメッセージとして引退スピーチの締めくくりに語られたのがこんなメッセージでした。

「もう一つ最後に。西武ライオンズは本当にこれからもっともっと強い球団になっていくと思います。そして、チームメイトも暖かくて思いやりがあって、向上心豊かな選手ばかりです。皆さんの夢をこれからも西武ライオンズに託しても間違いありません。本日はありがとうございました。」

現地でこのスピーチを聞いて、非常に嬉しい気持ちになったことは未だに忘れられません。自身のプロ野球生活22年間の中で3分の1にも満たない6年間を過ごした西武ライオンズに対して、そのファンへのメッセージとしてこう言ってくれたことが嬉しかった。あなたたちの夢をこれからもこのチームに託しても間違いないって、これはファンに対する最大の謝辞だったと思います。(その後のセグウェイに乗ってのグラウンド一周のインパクトが強すぎて覚えていない人が多いかもだけどww)

 

改めて、”ももち”こと嗣永桃子さんに対しては、今になって本当にありがとうございますって気持ちしかないです。ファンを愛し、ファンに愛された最強のアイドルだったんだなと。

コンサート当日の観客とのやり取りの中で、初めて来たお客さんに対して「間に合って良かった」と言ってましたが、果たして僕が間に合ったのかどうかよくわからないんですけれども、こういうことをブログに書くくらいには間に合っていたのかもしれません。

本当に贅沢な時間でした。ありがとうございました。