LOSTAGEとbloodthirsty butchersの思い出のはなし

 昨日(10/30)、渋谷のクラブクアトロにてLOSTAGEのツアーファイナルを見てきました。胸のすくような会心のライブだった。本来はここでライブレポートなんかを書けばいいのかも知れないけど、そんなものを書くのは本当に得意ではなくて、ただ昨晩のライブ中ずっと、あるライブのことを思い出していたから、そのことを書いておこうと、ふと思ったのです。

 

3年くらい前(ちゃんと調べたら2011年7月14日だった)、渋谷のo-nestでとあるライブを見ていました。『official bootleg vol.024』と題されたそのライブは、bloodthirsty butchersの企画で、ゲストにLOSTAGEとCARDが出演したライブだった。

LOSTAGEとCARD、今でこそこの並びに違和感を感じない人も多いのかもしれないけど、当時の空気ではこの2バンドの並びって、ちょっとあり得なかったと思うんですよね。CARDはLOSTAGE(当時はlostage)を脱退した清水と中野が2009年に結成したバンドで、当時のLOSTAGEとはお互い顔も見たくないくらいの関係だったと思う。2人の脱退が、いわゆる"友好的な脱退"でないことは五味兄も言っていたし、典型的な喧嘩別れだったろうと思う。

そんな2バンドを、半ば無理やりブッキングしたのはブッチャーズ吉村さんだった。「俺が組まないと、お前らずっとやらないだろ」って、吉村さんは言ってたかな。もう記憶が曖昧なんですけどね。でも、2バンドはきっちりお互いを意識してライブをしたと思うし、まぁこのライブをきっかけに仲直りなんてこともなかっただろうけど、お互いのバンドにとって、特にLOSTAGEにとっては、ひとつの"呪縛"を解くライブになったのは間違いないと思う。

2009年の年末にギターの中野が脱退してバンド名表記を「lostage」から「LOSTAGE」に改めてからの彼らは、ものすごく怒りのエネルギーに満ちていた。4人から3人になってアレンジが変わることも理由のひとつだったとは思うけど、過去の曲がセットリストから姿を消して、新曲ばかりでライブをすることも多かった。『LOSTAGE』というアルバムをリリースしてからは、特にその傾向が強かったかなと。あと、自主レーベルを立ち上げてリリースした『CONTEXT』の流出事件ね。

LOSTAGE『CONTEXT』違法流出騒動と、その後の反応 - Togetterまとめ

ハッキリ言って、この頃のLOSTAGEは怒ってたと思うんですよね。『CONTEXT』に入ってる「HELL」という曲なんかは特に顕著だし。でもやっぱり、怒りをモチベーションにしても長続きしなかったはずなんだ。だから、結果的にはこの日のライブがその後のLOSTAGEを形作っているというか、もっと言えばこの日のライブがなければあの3人はもっと低く飛んでいたか、あるいはもうすでにバンドとしての形を失っていたかもしれないなと、そんなことを思い出していたのでした。

ブログを読み返したら、兄貴もそう書いていました。

あれがなかったら俺は、多分今もLOSTAGElostageだった時の事に、モヤモヤしたものを抱えたままバンドを続けてたと思う。http://d.hatena.ne.jp/hostage/20130530

その後、「HELL」をライブで演奏することはほとんどなくなりましたよね。その替わりではないけど、昨晩のライブで言えば、「Good Luck / 美しき敗北者達」のイントロで聴かれた拓人さんのギターの深い残響音は、まさしく吉村秀樹に向けたものだったと思います。

MCでも言っていた通り、吉村さんに捧げた「Good Luck / 美しき敗北者達」という曲が出来て、『Guitar』というアルバムが出来て、そして昨晩のライブがあったから、だからこの日のライブを思い出したのかなと。

 

 LOSTAGEbloodthirsty butchersが共演するのを僕が見たのは、その日が最後でした(実際に共演したのが最後ってことではないですよ)。

2013年5月27日に吉村さんは逝ってしまって、やっぱりバンドなんて本当に脆いものだなぁと改めて思ったりして。

伝説になっちゃダメなんだよ

って、「kocorono」の中で吉村さん言ってたっけな。

だから、昨晩のライブのMCで兄貴が「このライブが終わった瞬間から次の作品のことを考える」って言ってて、そりゃそうだよなって、立ち止まってなんかいられないよなって思って、そしてそれを宣言できるLOSTAGEってバンドは、どこまでいっても信用できちゃうよなって、個人的には確信できた夜だった思います。

 

 やっぱりうまく言葉にはならないけど、最高のライブだったよ。間違いなく。