My Fav Records of 2020
2020年の個人的お気に入りアルバムです。
あまり文章にまとめて残したい気持ちもなかったのですが、後から2020年という年を個人的に振り返るためには良い資料になるので、自分のために書き残しつつ、少しの自己顕示欲とともに公開することにしました。
あまり細かいルールを課すことはしたくないので、
- 2020年にリリースされた作品の中から選ぶ
- 自分がフィジカルで購入したものの中から選ぶ
という2つのルールから10枚のアルバムを選びました。
順不同ですが、なんとなくお気に入りの作品から順番に書いています。
結果的に海外の作品だけになってしまったので、もしかしたらドメスティックリリースのリストも作るかもしれません。この辺は気まぐれで。
では。
Elder『Omens』
US ボストンの4人組の最新作。自分にとっては、前作『Reflections of a Floating World』から聴き始めたバンドだけど、ドゥーム/スラッジ方面からサイケ〜プログレへと一気に進化を遂げた傑作だと思います。
サウンド面では、メロトロンやムーグの導入による いわば Pink Floyd 的な静逸さというか、むしろ水墨画を思わせるような濃淡の表現に最大の変化があり、加えて メロウで美しいメロディーの充実が、Anekdoten や 近年の Anathema を感じさせる点も多く、プログレリスナーのみならず、幅広いリスナーにアピールしうるかなと。5曲 55分のスケール感も見事という他ないですね。
Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs『Viscerals』
UK ニューカッスルのドゥーム、ヘヴィサイケバンドの最新フル。
1曲目“Reducer”に代表されるような強靭なリフでドライブする曲もあれば、A面の最後を締め括るスポークンワーズ風味の“Blood and Butter”のようなバラエティも非常に魅力的。King Gizzard & The Lizard Wizardの19年作『Infest The Rats' Nest』あたりと共鳴する部分も感じるし、アンダーグラウンドからから世界を窺うには強力すぎる1枚になるはず。
Sinking『Only Echoes』
個人的には、この作品が2020年のベストemo。US マサチューセッツの4人組 Sinking のファーストフルアルバム。
バリバリのハードコアバンドを並行してやっているメンバーが鳴らす音楽は、意外にも寂寞としたサッドエモで、深く歪んだギターサウンドは Sunny Day Real Estate あたりを感じさせる部分もあるし、何より美メロな名曲揃いの凄い作品。emo好きの人は聴き逃し厳禁。
IDLES『Ultra Mono』
全英No.1ヒットにも輝いたUK ブリストルのポストロックバンドの最新作。
1曲目“War”のイントロリフからも感じられる過去最高レベルの攻撃性とジャンクな音作りにバッチリ衝撃を受けてしまいました。直情的な側面もありつつ、作品全体としての完成度とバラエティがズバ抜けていた印象のアルバム。
Fontaines D.C.『A Hero's Death』
アイルランド ダブリン出身の4人組バンドのセカンドアルバム。
ジャンル的にはポストパンクに括られていることが多いように思うけど、個人的にはガレージパンクのテイストを強く感じるし、ポストパンクとしても Joy Division に由来するものというよりは The Fall にルーツがあるような感触が非常に印象的なバンド。
今の状態のこのバンドを、なんとかフジロックで観たかったですねぇ。
Svalbard『When I Die Will I Get Better』
こちらもUK ブリストルの Svalbard の最新作。
昨年の来日公演の記憶が未だに鮮明だけど、メタルとして、そしてハードコアとして、前作『It's Hard To Have Hope』と比較すると一気に垢抜けたし、想像していたよりも圧倒的な進化を見せてくれていて本当に最高。
彼ら/彼女らが発するステートメントの力強さと矜持に毎度感じ入るとともに、このバンドがシーンの中心を担っていくと確信した傑作アルバムです。必聴。
Metz『Atlas Vending』
カナダのトリオ、Metzの4thアルバム。
Metz が新作を出せばいつも絶賛してしまうというチョロいファンであることは大いに自覚しているものの、いつだって自分の内面の深めのところをビリビリと震わせてくれるのはこのバンドだけなので、このバンドに対して金太郎飴的な評価をしている人の気持ちはわかるようでわかってない。
Deftones『Ohms』
Deftones、約4年ぶりのリリースとなる9枚目の最新作。
現在のラインナップになってからは4作目となり、Quicksand のメンバーでもあるベースのSergio Vega のベースサウンドも含めて、バンドの音像をどんどんアップデートしていて凄い。今年20周年記念盤としてリイシューされた『White Pony』はやっぱりギターの音が00年を感じさせるけど、本作のギターサウンドは2020年の音にしっかりアップデートされていながら、Deftones らしい濃さは全く失われていない音楽集になっていて、印象深い1枚。
Dark Tranquillity『Moment』
Dark Tranquillity、4年ぶりの最新作。
ギターチームが2人とも入れ替わるという変化がありつつも、元 Arch Enemy の Christopher Amott が正式メンバーとして加入するなどして、基本的な作品の方向性は前作『Atoma』の延長線上にある。ただ、このバンドのデスメタルとしてのアグレッションとゴシックなテイストが高い次元で融合していて、おそらく過去最高レベルにMikael Stanne のクリーンヴォーカルが取り入れているあたりも重要なポイント。
個人的には、彼らの30年のキャリアの集大成を感じさせる最高傑作。心からオススメしたい1枚。
Oranssi Pazuzu『Mestarin kynsi』
フィンランドのアヴァンギャルドブラックメタルバンドの5thアルバム。
元来のサイケデリックなテイストに加えて、本作は強烈な不穏さを纏った インダストリアルノイズが支配的ながらも、部分的にトラップを感じさせるパートもありつつ、それでも北欧ブラックメタルとしての暴虐性を全く損なっていないあたりに、一層の奇怪さを感じる一大傑作だと思います。
何度も繰り返し聴いていると精神分裂しそうになるくらいエグい1枚。
Bandcamp おすすめ音源(その1)
2020/3/20 に Bandcamp が行った手数料無料のキャンペーンが、また新たに開催されることになったので、自分への備忘録も兼ねて、おすすめ音源を紹介しておこう。
何かテーマを決めて紹介しようと思ったが、なかなか決めれらなかったため、取りあえず今回は domestic 日本国内で活動している(していた)ミュージシャンに絞って50枚紹介することにしてみた。
中には、Spotify をはじめとするサブスクリプションサービスで配信されているものもあるし、NYP(Name Your Price)のものもあるが、ここはサポートの気持ちをもって音源を購入するのが良いと思っている。
もちろん、来月・再来月の1日にも同じキャンペーンが開催されるから、ひとまずウィッシュリストに追加しておくだけだっていい。
ちなみに、本キャンペーンは"midnight to midnight PDT"なので、日本時間では 5/1 16:00 - 5/2 15:59 になる。
01. LOSTAGE / HARVEST
Bandcamp で初配信された、LOSTAGE の最新アルバム。
02. Boys Age / Kusouzu
リリースされたばかりの Boys Age 最新アルバム。
03. Rebel One Excalibur / Live at Casa "ON THE BEACH"
福島のオルタナティブハードコアトリオのライブ音源。
04. TIALA / LIVE at BUSHBASH
TIALA 復活ライブ音源。こちらの売り上げは、全額ライブハウス 小岩Bushbash へのドネーションになる。
05. Sky Mata / Dye Xanh
札幌の宅録ミュージシャン Matthew Haya のソロユニット、The Sky Mata の3rdアルバム。超オススメ。
06. BADDEST UNITY / suggestion
2人編成のユニット BADDEST UNITY の最新音源。シブくて最高。
07. GREEN MILK FROM THE PLANET ORANGE / THIRD
GMFTPO の最新作。3曲43分のめり込んで聴けるジャパニーズオルタナティブの大傑作。
08. nihon alps / 2 songs demo
奈良を中心に活動するオルタナティブロックバンドの最新音源。この音源の売上はライブハウス 扇町para-dice へ寄付されるとのこと。
09. Discharming man / 極光 -kyokkou-
北海道の至宝による18分32秒の超大作。
10. 5kai / Untitled
京都を本拠地に活動する5kaiのEP。ミニマルさがクセになるオルタナティブロック。
11. Mauerfall / Ⅱ
東京のMauerfallの最新作。超メタリックでクソイケてる。
12. dear student / I still see you in my dreams
活動休止中の女声ボーカルエモの傑作。Rainer Maria や Pohgoh に通じるグッドメロディーがいっぱい。
13. 左右 / FIGHT
男女デュオ 左右の最新アルバム。このアルバムには好きな曲がありすぎる。
14. 高円寺百景 / DHORIMVISKHA
超アヴァンギャルドだし、超スリリングだし、超オシャレ。
15. magic love / Night Falls
東京のシューゲイザーバンドの知る人ぞ知る傑作。
16. lang / There is no reply but sweet wind blew
これを激情ハードコア好きだけが聴いてるのはもったいない。日本語フォークとしても秀逸すぎる1枚。
17. 四つ墓 / ひとでなしつき
18. Narcia / the ship has sailed
このバンドの日本っぽくない感じが好き。また活動していくみたいなので注目。
19. SNJO / 未開の惑星
個人的に Local Visions にのめり込むきっかけになったのがコレ。
20. RETROGRADE97 / Demo 2019
トリプルギターのインストゥルメンタルバンドのデモ音源。メロディーが際立って良いと思います。
21. Via tov / St.James
22. Dhidalah / Threshold
23. graf three / Give everything and live
昨年末に解散した3人組のスタジオ録音音源。切迫したディスコーダントハードコア。
24. How to draw A castle / help EP
高知のマスロックトリオの4曲入りEP。
25. 喃語 / Setsuwasetsu
26. スーベニア / Think Twice
27. asthenia / The City / Fun
28. 吉野-yoshino- / self-titled
29. ツィトローネ / Lost Pinky
おそらく配信のみでライブなどの活動をしていないっぽいので素性をよく知らないのだけど、 変拍子を多用するギターリフが超いい。
30. FNCTR / five
京都の4人組。ミニマルでジャズテイストなインスト。
31. North by Northwest / burning pork
32. deerafter / tops and bottoms
33. Velladon / Freedom
34. WETNAP / self-titled
35. arigarnon friends / Boy to Man
36. SWARRRM / こわれはじめる
37. Fredelica / DEMO2020
Fredelicaの最新デモ音源。こちらの売上は、初台WALL へのドネーションになります。
38. 松木美定 / 主観
39. mel / YOURS / LIGHTS
40. sushi / sushi the mine
京都 ロックコミューン発のバンド。あまり知られてないかもしれないけど、滅茶苦茶いいバンドだと思います。
41. alvin / alvin
42. 1inamillion / DYNAMITE NAMA-BEER
43. 満洲候補者 / incident
東京の満洲候補者の2010年作。不穏なハードコア・サウンドに痺れる。
44. by the end of summer / Laughing e.p.
こちらもロックコミューン発エモリヴァイヴァルバンドの傑作EP。
45. SEMENTOS / 確かなこと、不確かなこと
SEMENTOSのフルアルバム。正直、出す出す詐欺で出ないと思ってた。ごめん。
46. CAUCUS / in vain you are
唐突に CAUCUS の1stが Bandcamp で公開されたのでオススメしないわけにいかない。
47. VERITAS CONC.75 / Rock N' Roll Devil
48. LOOLOWNINGEN & THE FAR EAST IDIOTS / ANÖKUMENE
49. GAME CENTER / あわれな魂 (Demo)
50. UHNELLYS / BROKEN
UHNELLYSはいつだって、俺にとってのレベル・ミュージック。
おわり
ATATAの配信ライブを観た #WAFA
思えば、色んな事をパンクから(勝手に)学んできたな、と思う。
暴力のことも、あらゆる差別のことも、政治のことだってそう。
パンクのアティチュードって、つまりは"keep on thinking, keep on acting"だと思っていて、要は「自分の頭で考えて、行動に移し、そしてそれを続けていく」ということで、結局自分自身は何もやれてないかもしれないけど、思考して行動する人たちに憧れて、尊敬して生きてきたと思う。
3/22、ATATAの配信ライブを観た。
ATATAの本拠地たる新代田FEVERからの配信ライブだ。
新代田FEVER。
08年に就職して東京に出てきた自分にとっては、東京での暮らしを共にしているようなライブハウスだ。レモンサワーが旨くて、300円なのが最高の呑み屋ハコだ。
その日は、Comeback My Daughters のライヴを観るためにそこにいるはずだった。前日にプレイガイドから「チケット早く発券してね」というメールが来ていた。何もかも混沌としているんだろう。もはやそんなことでイラついている場合じゃない。
普段は家じゃ絶対呑まないお酒を胃袋に流し込みながら、そしてちょっと泣いていたかもしれない。
ATATAは新代田FEVERのフロアで、円になって演奏していた。
それはきっと、スタジオで練習しているときのように、ATATAがATATAのために演奏する形だったんじゃないだろうか。
個人的には、投げ銭という言葉はあまり好きじゃない。
昨年の渋谷での全感覚祭にて、ライブハウスの入り口で寄付を募るボランティアスタッフを見て、「投げ銭だから、ライブを観る前にお金を払うのは違うんだよな」と言っていた知人がいた。
そうじゃない、そうじゃないんだよ。
あれは、マヒト君が書いたステートメントに共感した人がサポートするという形だったはず。音楽を聴いて、それに対して値段をつけるような話じゃなかったはず。
サポートする。
これがちょうどいいサイズの言葉なんじゃないだろうか。
もちろん物乞いなんかじゃないし、新代田FEVERの努力やATATAの演奏に値段をつけているつもりなんて一切ない。
自分たちが守りたいコミュニティをサポートしてるだけ。
結果的には、実際にライブが開催されたくらいの金額が支払われたようで、それはとても良いことだ。
まぁ、そのお金が新代田FEVERに入ろうが、ATATAに入ろうが、Googleがピンハネしようが、もはや僕には関係ない。賽銭箱にお金を入れたみたいな気持ちなのだから、あとは神様が好きにしてくれても構わない。
ただ、サポートしているだけ。サポートしてあげてる、なんて思ったりしない。
助けてくれと言ったから助けるわけじゃない。サポートしたいと思ったから、勝手にサポートするだけ。
ATATAというバンドが好きだと思う。
でもそれも、ただATATAが好きなだけ。変な話だけど、別に友達になりたい訳じゃないし、特別に扱われたいなんて思うこともない。
自分がサポートしたいコミュニティをサポートをして、自分の食い扶持くらいは自分で稼いで、自分の欲しいレコードくらいはお小遣いで買って、時には我慢して、自分の呑む酒だってお小遣いで買うけど、たまには奢ったり奢られたりしていきたい。
世界一のライブハウスを目指す新代田FEVERと、如何わしき我等が同志ATATA。
11月7日に、また一番旨い酒を呑ませてください。
My Fav Records of 2019
今年もまた年間ベストディスクを選ぶ時期になりました。"年間ベスト"という表現がどうもしっくり来なくなってしまったので、"お気に入りのxx枚"という選定基準に変えました。
今年は特に新作よりも意識的に過去の作品を聴いていたことと、その作品が"新譜"であるという理由では聴かなかったこと、そして Spotify や Apple Music のようなサブスクリプションサービスをほぼ利用しなくなった影響もあり、例年50枚選んでいたところを、30枚にしてリスト全体の濃度を保ちつつ、特に気に入って愛聴していたものを選んでみました。例の如く、順位にはさほど意味を持たせていません。また、これも毎度のことですが、各作品へのコメントは随時追加していこうと思います。
リスト全体を眺めると、今年は特にバンドサウンドに拘りを持って音楽を聴いていたかなと思います。レコーディングからリリースのフォーマットに至るまで、改めてバンドサウンドへの尊敬と憧れを新たにした作品が下記のリストにも多くあります。
では。
続きを読むMost Impressed 10 Records of 2019 1st-half
下書きだけ書いてそのままにしておくつもりだったのですが、もしかしたら誰かの役に立つかもしれないので、そっと公開しておきます。
今年の上半期によく聴いた10の作品です。あまり"上半期ベストアルバム"って感じではなくて、印象に残っている10枚という感じです。順不同で10枚並べておきます。
Spotifyを使うのをやめてもう1年以上が経っていることもありますし、各作品のSpotifyリンクを設置することは野暮なのでやめておきます。手間がかかるかもしれないですが、音を探しに行くことだって音楽だと思ってます。
では。
『untitled』5kai
5kaiの最新EP。1stフルアルバムのミニマル感とはまた一線を画したオルタナティブな触感が気持ち良すぎて聴きまくった3曲入りEPですね。東京でライブ観る機会も増えてきて嬉しい。
『self-titled』Defeater
このバンドの音楽に宿る叙情性をつぶさに表現した傑作じゃないでしょうか。妙なギミックもなく、ストレートに好きだと思いました。
『ANGELS』THE NOVEMBERS
いま日本で一番凄いライブパフォーマンスしてるのはTHE NOVEMBERSだと思っているのですが、これは作品としての美しさも極まっていて素晴らしい。海外の人に『日本のオススメのバンド教えてくれ』って聞かれたときは、いつも『THE NOVEMBERS!!』と答えているよ、私は。
『Gold & Grey』Baroness
Baronessはもちろん音楽が最高なんだけど、毎回アートワークも最高だから紹介したいので挙げておこう。
『Down the Valley』NOT WONK
NOT WONKは東京に来てくれる度にライブ観に行っているくらい大好きなんですが、ここ数年狭いライブハウスで見せてくれていたものをこうやってフルアルバムで提示してくれて、改めて彼らのパンクバンドとしての美学や哲学が世の中に少しずつ浸みわたっていく様は、ある種の生きる喜びであると思うわけです。
『Atlanta Millionaires Club』Faye Webster
今年聴いたシンガーソングライター系のレコードで一番好き。
『Morbid Stuff』 PUP
PUPのライブ観ないと死ねない。
『self-titled』 WETNAP
初期emoというか、DCパンク的な感触をバチバチに浴びせてくれる最高のバンド。
『脊髄』sassya-
別に友達でも何でもないのに、sassya-の音楽聴いてるときに感じるシンパシーがすごくて、自分のテーマ曲みたいに感じることも多い。langとsassya-が私にとっての"東京の音"、みたいなところがあります。
『Keep Drinking』Drinking Boys and Girls Choir
今年上半期どころか、近年稀に見る傑作パンクアルバムだと思います。韓国の大邱からこういうバンドが出てくるのとか超面白いです。Keep Drinking!!
おわり。